1.通知に関する改正点
今回の改正で最も大きく変わった点としては、通知に関することです。具体的には、調査官が会社に対し事前に通知を行う場合は、次の事項について通知しなければならないとされました。
1)調査を開始する日時
2)調査を行う場所
3)調査の目的
4)調査の対象となる税目
5)調査の対象となる期間
6)調査の対象となる帳簿書類その他の物件
7)その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
これだけを事前に電話等により通知しなければならないことになったのです。この殆どの事項は、これまでの税務調査の実施に際して通知されてきた事項です。
つまり今までも同じようなことは行われていたのです。ただ今回の改正では、その事項が法定されたため、税務署としてもあまりあいまいなことは言えなくなったということです。但し、調査対象となる税目については、これまでの調査では殆ど通知されませんでした。
法人に調査に来るのであれば、法人が関わっている税金すべてに関しての調査であることは当たり前という発想だったのです。
改正後は、「法人税、消費税、源泉所得税の調査を行います」と限定して通知することが求められます。会社としてはどの税目について調査されるか明確になるので、少なくとも不利になるということではありません。
調査の対象となる期間についても、従来であれば、「とりあえず過去の3期分を見せてもらう」などと、かなりあいまいで幅を持ったところでの通知がされていましたが、「平成○○年度分から○期分」と、かなり具体的に通知をしなければならないことになります。
但し、実地調査をしている間に、最初に通知していた期間以外の課税期間についての調査が必要になった場合については、追加として通知し、その分の調査をされることになります。つまり、最初の通知した期間だけしか見られないということではないので注意が必要です。
しかし、今回の改正によって無通知調査がなくなったわけではありません。通則法では、過去の状況や情報などから、正確な課税標準や税額の把握が困難になると思われる場合については、通知を必要としないとしているからです。
但し、これだけ通知ないようについて細かく規定されている以上、無通知調査が頻繁に行われるというのは考え難く、むしろ少なくなる傾向になるだろうと考えられます。
2.帳簿書類等の留置きに関する改正点
税務調査の流れの中で、実地調査では調査官は会社の帳簿をチェックすることが主な事務内容となります。
基本的には、調査を行っている現場で確認作業を進めていくのですが、時間の関係上などの理由から、帳簿書類などを税務署に持ち帰って調べることがあります。この書類を預かって行く行為が「留置き」という言葉で規定されました。
基本的な取扱いは、従来から行われていた「預かり書」を会社に交付することで、預かることになります。大切な点としては、これが法律で規定されたということです。つまり、会社としては帳簿書類などを提示すればよいということだけでなく、留め置かれることもあると考えて調査に対応しなければならないということです。
次回は、調査の終了通知に関する改正点についてご説明します。
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