昭和63年の制度創設以来、その利用者が年間に、ほとんどいないと言われた特定支出控除について、平成24年度税制改正で大幅に改められることとなりました。
1.従来の特定支出控除制度
給与所得者が支払った一定の支出(特定支出)が給与所得控除額を超えるとき、その超えた金額を給与所得控除額に上乗せできるという制度です。
特定支出の種類としては、下記のものが限定列挙されていますが、いずれも「通常必要であると認められる」あるいは「職務に直接必要な」という条件が付きます。
1)通勤費
2)転勤に伴う転居費用
3)研修費用
4)資格取得費(弁護士、公認会計士などの資格は除く)
5)単身赴任時の帰宅費用
給与所得控除額は、例えば年収300万円であれば108万円、年収700万円であれば190万円となるので、特定支出がこの額を超えるのは極めて稀でした。おそらく税制においても最も利用者の少ない制度の1つではないかと思われます。
2.特定支出の範囲拡大
1)職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明がされた弁護士、公認会計士などの資格取得費
2)次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の
遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明がされたもの。
・書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するもの及び制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要と
される衣服を購入する為の支出
・交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他
これらに類する行為の為の支出
3.特定支出の合計額
給与所得の金額の計算上、その超える部分の金額を給与所得控除額に加算することとされました。
1)その年中の給与等の収入金額が1,500万円以下の場合 >>給与所得控除額の2分の1に相当する金額
2)その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合 >>125万円
上記2と3については、平成25年分以後の所得税について適用されます。
4.確定申告が必要
この特定支出控除を受ける為には、各人が確定申告を行う必要があります。その際、「特定支出に関する明細書」「給与の支払者の証明 書」を申告書に添付するとともに、搭乗・乗車・乗船に関する証明書や支出した金額を証する書類を申告書に添付することになります。この ほか、給与所得の源泉徴収票も申告書に添付します。
支払項目
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作成または保存書類
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記載内容
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電車賃またはタクシー代
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交通費明細書の作成
日報などの作成
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・金額 ・交通手段
・どこからどこまで
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自動販売機での購入
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メモまたは伝票の作成
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・金額 ・どこで買ったか
・誰に渡したか
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慶弔費
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メモまたは伝票の作成
招待状、案内状、礼状等の保存
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・金額 ・誰に(住所・氏名)
・内容または目的
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領収書がもらえない接待交際費
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メモまたは伝票の作成
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・金額 ・接待相手(住所・氏名)
・支払先
・接待の目的
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領収書を紛失した場合
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メモまたは伝票の作成
支払がわかる関係書類の保存
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・金額 ・支払先
・内容または明細
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